マッチ先生が贈る今月の一句ー10月 マッチ先生が贈る今月の一句ー10月
宵闇に香やはかくるる金木犀
先週から、季節は突然冬になりました。朝夕の風が身に染みる今日この頃をいかがお過ごしでしょうか。
最近、街を歩いていると、どこからともなく上品な香りが漂って気持ちをリラックスさせてくれます。辺りを見回しても目に映るのは樹木ばかり。目を凝らしてようやく、梢にかたまってついている黄色い小花を見つけることができます。金木犀の花は、こんなに目立たない姿なのに、香りを放って存在を知らせているのです。
金木犀を想うとき、きまって浮かぶのが、『古今和歌集』にある春の歌です。金木犀のようにひそやかに香る梅の花を詠んでいます。
春の夜のやみはあやなし梅の花色こそ見えね香やはかくるる 凡河内躬恒
梅の花も、桜ほどの華やかさはないものの、そこはかとない香を漂わせて心を和らげてくれます。金木犀は、闇の中でも香を放つ梅と同じような存在と言えるでしょう。
人にもそれぞれの特性があると思います。ある人は、先頭に立って人々を率いていく存在。またある人は、表舞台に出ることなく、陰から人々を支える存在です。若い頃の自分は、人の陰に立つことを快く思ってはいませんでした。私も表舞台に立ち、皆を率いていきたいと思っていました。でも、「適材適所」ということは確かにあるのだと、今は思っています。みんながみんな、前に出ようとしたらどうなるでしょうか。やはり、後ろから、あるいは縁の下から支える人が必要なのだと思います。
今の私の希望は、金木犀のようにそそと咲き、姿は見せずとも、ひそやかに香って人を癒すことです。
陰のような存在であることを心さびしく思い、悩んでいる方は、この金木犀の生きざまを見直してみてください。少しだけ心が軽くなると思います。









