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中等科・高等科校長 烏田 信二
2023年度 第90回 高等科卒業式
春を隣りに感じてから久しく、雨の中、雪の中、静かに力を蓄えた木々の芽が、このあたたかな光を浴びて今ほころび始めました。
第 90 回卒業生の皆さん、そして保護者の皆様、光塩女子学院高等科ご卒業おめでとうございます。心よりお慶び申し上げます。
光塩の中等科に入学なさった頃、まだあどけなさを残していた皆さんが今は立派に成長し、その自覚と誇りを胸に、ついに今日という旅立ちの日を迎えています。
皆さんが高等科に進学した 2021 年は、新型コロナウィルス感染拡大の波が次々に押し寄せ、なかなか落ち着かない日々でした。その影響を受けて、宿泊行事である山荘生活は実施できませんでした。代わりに国立科学博物館附属自然教育園にて日帰りの自然学習を行いました。心地よい森林浴と散策に汗を流しました。2 学期もデルタ株襲来と共に始まりました。その影響で体育祭は、所沢市民体育館使用を断念し、2 日がかりで校内にて実施しました。親睦会は、逆にコロナ禍の恵みを受けて、これまでにない新しい発想が生まれ、クラス企画が誕生しました。各企画で皆さんが嬉々として動き、実行し成功をおさめました。部活動や委員会活動などにおいて皆さんがリーダーシップを発揮し始めたのもこの頃でした。
高等科2年生の時には、制限があったものの、多くの学校行事を開催できるようになりました。光塩祭も規模を縮小した形ではありましたが、しっかり準備した上で実施できましたし、体育祭も所沢市民体育館にて 6 学年が一堂に会して開催できました。中等科の時に叶わなかった宿泊行事、修学旅行も 2 泊 3 日と短縮されたものではありましたが実施でき、参加した全員が京都・奈良への旅を思う存分楽しんで笑顔で元気に帰ってきたことが印象に残っています。親睦会における学年企画では、会場いっぱいに趣向を凝らした装飾を施し、いらした方々をホスピタリティあふれるおもてなしでお迎えしていました。有志による新企画My Favoritesにおいては、各々が自分の「好きなもの」について、聴衆を魅了するありのままの個性全開の発表を行いました。特別講座「光塩女子学院のここを変えたい!」では、有志の方々がアンケート実施と分析、そして学年全体への協力を促すなど、粘り強い努力を重ね、その結果として、期間限定ではありましたが、防寒対策としてのダウンジャケット着用を実現しました。このように目指すところに向かって進むエネルギーが大きく、教職員や友人などを巻き込んで突き進んで行く姿は思い出深いものがあります。
高等科 3 年生になって、4 月には光塩祭を立派にやり遂げました。体育祭においては学年全体で一致団結して勝とうという気概が見られました。惜しくも優勝を逃しましたが、優勝を目指して狙いを持って協力し創意工夫している姿には心打たれるものがありました。クリスマス会の合唱コンクールにおいては、少人数にもかかわらず、それを感じさせない声量を湛え、きれいな歌声とハーモニーで見事に金賞を受賞しました。皆さんの中にこの金賞受賞の喜びを次のように述べておられる方がいました。「実は高 2 の合唱があまりに上手で素晴らしすぎて、とても焦った。これは負けていられないと思って、みんなで団結して頑張ることができた。高2によって私たちは高められ、金賞を受賞できた。高 2 が私たちの力を引き出してくれた。感謝している。」とのことです。これを聞いて私はとても素晴らしい感性だと思いました。自分たちの成功は、多くの方のおかげを被っている、競い合う相手への敬意と感謝のうちに喜びを噛みしめている姿は、謙虚で清々しいものがありました。
皆さんは、一人ひとりの個性を寛容に認め、大切にすることに長けていました。
ただ学年全体でまとまり強い結束のもと一丸となって、何かの目標を達成するという点では、なかなか思うにまかせぬことが多かったと記憶しています。
ところが、先ほど申し上げたように最後の学年対抗行事、合唱コンクールで見事にそれを達成しました。その喜びの瞬間に残念ながら立ち会えなかった方もいました。皆さんには、立ち会えなかった方々の事情や気持ちも理解し、尊重する度量があります。お互いの個性を尊重し、認め合う力があります。多様性をありのままに受け入れる力があります。先ほど紹介した謙虚で清々しい発言は、皆さんの学年全体の特性をよく表していると私は感じています。
担任の先生に皆さんの印象や思い出を尋ねたところ、次のようなものが挙げられました。
中等科の時とは、勉学への取り組みが驚くほど変わっていて、大きな成長を感じた。
心も体も成長して落ち着き、高校生になってもともと持っていた良さが現れていた。
一人ひとりが友だち想いで思慮深い学年でした。
入試に向けて弱音を吐かずコツコツと努力を積み重ねていた姿が印象的でした。
控えめな方が多く、打ち解けるまでに時間がかかりました。一方で心の中に秘めているものがたくさんあって読書感想文コンクール等の場において、内に秘めるエネルギーを存分に向けて力を発揮しました。体育祭における応援の創作や幕のデザインなどもそれが顕著なものでした。
真面目で素直で、自分をしっかり持っている印象。 というものでした。
皆さんの持っている「光」と「塩」を見つめるあたたかい眼差しが感じられますね。
これから皆さんは学び舎光塩を旅立ち、競争社会の荒波にもまれることもあるでしょう。疲れた時には、光塩に帰って来てください。休んでありのままの自分を取り戻したらまた旅立てば良いのです。嬉しいことがあったとき、ぜひ光塩に帰って来てください。一緒に喜びましょう。一人で喜ぶよりも多くの人で分かち合った方がその喜びはより大きなものになるからです。
さて、これから旅立つ卒業生の皆さん、私たちの身の周りからもう少し視野を広げてみましょう。能登半島地震で被災された方々は、今も不自由な生活をしていらっしゃいます。ウクライナとロシアの戦争は、出口が見えず混沌としています。イスラエルとパレスチナのガザにおける戦闘も解決の糸口が見えてきません。世界は答えのない問題に満ちています。自然災害、そして紛争は今起こっていることであり、太古の昔から変わらず起こり続けていることでもあります。人類の課題は太古の昔から変わっていないのかもしれません。しかし、皆さんはこの学び舎光塩で、多様性をありのままに受け入れ、尊重する力を身に着けました。また、声をあげることができないほどの苦しみ、心の痛みに敬意を持って寄り添う力を培いました。これまでいただいた多くの恵みあふれる関わりに感謝して、これからはその「光」を人々の間に輝かせ、人々の中に溶け込んで味をつける「塩」となってください。与えられた新しい場で皆さんの周りにWomen for Othersを実現してください。
最後になりましたが、保護者の皆様、本日は誠におめでとうございます。 このように成長なさったお嬢様方を、今日一層頼もしく、誇らしく感じていらっしゃることでしょう。お嬢様方のご卒業はご家族の皆様方にとっても、まさに一つの区切り、「卒業」の時でもあると思います。お慶び申し上げます。
本日、この晴れの卒業式に居合わせ、お一人おひとりに卒業証書をお渡しできましたことは、私にとって大きな喜びです。間近にお顔を拝見し、6年間の成長の証をひしひしと実感いたしました。これから、さらに成熟なさり、世界に羽ばたかれご活躍なさることを確信しております。
お嬢様方が在校中に、充実した学校生活を送ってくださったことは、保護者の皆様のご協力・ご支援の賜物と、心より御礼申し上げます。
卒業生の皆様お一人おひとりの今後のますますのご成長とご多幸ご活躍を心よりお祈り申し上げて、お祝いと感謝のご挨拶とさせていただきます。
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