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中等科・高等科校長 烏田 信二

2025 年度 2 学期終業式
皆さん、おはようございます。
クリスマスが近づいてきています。カトリック教会においては11月30日の日曜日から救い主イエスのご降誕を迎えるための準備期間、待降節が始まりました。日曜日の度にろうそくの灯がひとつずつ増えていき、4本のろうそくすべてに灯がともりました。明日24日の日没後にはクリスマスをお祝いすることとなります。
この4本のろうそくのうち、3本は紫色です。紫色には高貴さや神秘的という意味もありますが、一方でイエス様が十字架に架けられる前に紫色の服を着せられていたということもあって、「苦しみ」の意味があります。大切な時を迎えるために心を込めて準備をすることは、時に苦しみを伴います。しかし、その先にはとても喜ばしいことがあります。その喜びは準備の段階から始まっていて、もうすぐかわいい赤ちゃんに出会えるというワクワク感があります。きっと、今の苦しみはまさに生みの苦しみで、その先にはとっても素晴らしいこと、喜ばしいことが待ち受けている。そのように信じ希望を持って待降節を過ごします。それを現すものとして、4本のろうそくのうち1本はピンク色になっています。待降節の3回目の日曜日、今年ですと12月14日にピンク色のろうそくに灯がともりました。そして、一昨日12月21日の日曜日には4本目のろうそくに灯がともりました。
クリスマス直前の今日、私たちは2学期の終業式を迎えています。いよいよクリスマス、いよいよ冬休み、お正月も楽しみですね。生みの苦しみの先には必ず喜びがあります。クリスマスの大切なメッセージだと私は思います。2学期を振り返ると、このようなことを繰り返して私たちは歩みを進めてきたように思えます。体育祭、校外学習、修学旅行、親睦会、そして、クリスマス会と多くの行事がありました。各行事の度に、皆さんそれぞれに役割があって事前の準備を行い、多くの労力を費やして行事当日を迎えました。その実りは大きく、労力を費やせば費やすほど、多くの達成感を味わったことと思います。振り返ってみると、終わった時の達成感はもちろんのこと、当日に向けて仲間と知恵を出し合い、苦労しながら準備していく過程の中にも期待・希望、そして、多くの喜びがあったはずです。今日は、この後、オーストラリアのブリスベンにあるルルドヒルカレッジからいらしている二人の留学生のプレゼンがあります。楽しみにしていてください。お二人も日本に来るために多くの準備をしてきました。ウェルカム委員の皆さんもたくさん準備してお迎えしました。まさに今、喜びを享受していることと思います。
さて、2学期の締めくくりに今年度の目標「社会とのかかわりの中で歩む」について考えたいと思います。今回は貧困の問題についてです。この2学期は、親睦会やクリスマス助け合いを通して、貧困に苦しむ国や地域への支援の機会がありました。親睦会やクリスマス募金で集められたお金は、メルセス会を通してアフリカのコンゴや中米グアテマラ、南米ペルーをはじめ、貧しい国や地域での支援活動に役立てられます。クリスマス助け合いで皆さんが寄付してくださった日常生活に必要な食品や日用品は、メルセス会のシスター中村が運営するホームレスの方々を支援する「山谷ほしのいえ」をはじめ、経済的に厳しい方々を支援する複数の施設に届けることができました。この「山谷ほしのいえ」には、今年もこの12月に中3の有志の方がボランティア活動に訪れてくださいました。同じくこの12月に中3有志の方は早稲田奉仕園にあるシャプラニールを訪れました。シャプラニールは南アジアのバングラデシュやネパールを支援している国際協力NGOです。2号館地下や職員室前の掲示板には古切手収集コーナーがあります。この古切手は、シャプラニールに運ばれ、シャプラニールが収集家に買ってもらい、そのお金をバングラデシュやネパールへの支援に役立てています。皆さんも届いたハガキや手紙に貼ってある古切手を是非、提供してください。その他、缶についているプルトップを集めています。こちらは両国の同愛記念ホームに送られ、たくさん集まると車椅子に変身します。私たちが日頃小さな心がけをすることで、大きな実りとなることが身近なところにあると言えます。
そして、NPOせいぼの特別講座を通して、親睦会ではマラウイコーヒー、マラウイ紅茶、日本初となったマラウイチョコレート、チテンジなどの販売を行いました。売り上げを昨年よりさらに伸ばしました。売り上げは全額、アフリカ マラウイの子供たちの給食支援になります。給食があれば貧しい子供たちも学校に通うことができます。学校に通うモチベーションにもなります。学校に通うと、勉強して貧しさから脱却できる可能性が高くなります。その意味で教育は貧しさからの解放のためにとても有効な支援であると言えます。そう考えると、メルセス会を通して行っているMFB(メルセス会フィリピン奨学金)支援はとても意義深いものであると言えます。
これらの支援は、私たちが世界に目を向けて、困っている方々を心にかけ、「もう一人の友」となり、つながって共に歩もうとするものです。経済的に支援が受けられなくて、貧しさが度を越すと、教育を受けられず、それは怒りや憎しみに変わっていきます。不満が鬱積して怒り・憎しみの塊になって爆発し、それが紛争を引き起こします。世界の各地にそういう状況があります。過去にあった紛争から学んで考えたいと思います。
明治大学文学部教授の齋藤孝先生は、その著書『信じる力』(女子パウロ会)の中で1994年にアフリカのルワンダで起きた大量虐殺事件について触れてくださっています。この事件は100日にも満たない間に、ルワンダの多数派のフツ族が少数派のツチ族を100万人近く殺害したとされる事件です。齋藤孝先生は、このような状況の中で生き抜いたイマキュレー・イリバギザさんのお話を2冊の本イマキュレー・イリバギザ、スティーブヴ・アーウィン著 原田葉子訳『薔薇の祈り ルワンダ虐殺、ロザリオの祈りに救われて』(女子パウロ会)、同著者 堤江実訳『生かされて』(PHP文庫)から紹介してくださっています。イリバギザさんは、地域の牧師さんに他の7人のツチ族の女性と共に3ヶ月にわたってかくまってもらい生き残ることができました。しかし、いつ殺されるか分からない状況で3ヶ月もの間、狭いところで絶望しないで耐え続けることは難しいことです。イリバギザさんは不安に押しつぶされ絶望してしまいそうになることを「悪魔の声」と呼んでいます。この「悪魔の声」は、ロザリオの祈りを唱え、十字架をぎゅっと握り締めると消えたそうです。このことを齋藤孝先生は次のように解釈し説明してくださいます。『心の中に部屋があって、その部屋の中に神さまがいる間、つまり祈っている間は「悪魔の声」は聞こえなくなる』『心の部屋を、幸せな何かで満たすことができれば、ネガティブな要素は入ってくることができません。』
確かに、私たちは何かをするとき、うまく行かないことが続いたりは苦しいことが続いたりすると、絶望して自暴自棄になってしまう誘惑にかられます。しかし、そこには必ず喜びに変わる要素があって、喜びは既に始まっていると信じ、不安に支配されないで心の平安を自分の心の中でつくることができるではないかと思います。
そして、支援にかかわることは、ネガティブなものを払拭し、ポジティブな領域を心の中に増やしていくことになるのではないかと思うのです。「もう一人の友」とつながること、共に歩むことで心が和やかになる。それは私たちの心の部屋から怒りや憎しみ、不安な要素を追い出し、生きる希望を見出し、あたたかい心を創り出して行くことにつながるのではないかと思うのです。是非この機会に心がけて参りましょう。
それでは良いクリスマスと新年をお迎えください。
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